安芸武田氏家系図(清和源氏新羅三郎義光流)




清和源氏新羅三郎義光流『安芸武田氏家系図』

○武田氏系図の考察

武田氏の系図には異説がある。以下に主な異説等を紹介する。

・武田氏は信玄に至る系統が嫡流だとされているが、これに対する異論も少なくない。

・武田家の家祖義光を初代とし、信玄を十九代とする系図が一般に知られている。しかしながら、系図は一本に描けても必ずしも直系歴代で嫡子相続を守れたわけではない。実際には鎌倉時代の四代信義の後に忠頼、有義が、六代信政の後に信長が、また室町時代の十三代信満の後に信元、信長、伊豆千代丸がそれぞれ惣領職を継承していたのではないかとする有力な説がある。

・武田氏は新羅三郎義光以後、信玄至る本家嫡流が代々甲斐守護職を継承したとされているが、鎌倉時代においては、この系統(本家嫡流)の安芸守護在任を示す資料が数多く残されていてにわかに信じ難い。

・五代信光は承久の乱の恩賞で安芸守護に任じられ、その後、蒙古襲来時に幕府の命により、本家嫡流は安芸に下向した。つまり信光-信政-信時-時綱-信宗-信武と続く直系歴代(本家嫡流)は本拠を安芸に移し、一方、信政の子の政綱-信家-貞信-政義と続く流れ(石和流武田氏)は石禾御厨に本拠を置いた。このことから鎌倉時代においては本家嫡流が安芸、庶流の石和流武田氏が甲斐を支配していたと思われる。

・信光以後、鎌倉時代を通じ甲斐守護職については明証を欠くが鎌倉時代末期には石和流武田氏の政義が甲斐守護職に就いていることが明らかである。これらのことから石和流武田氏こそが甲斐武田氏の嫡流で代々甲斐守護職に就いていたとの説もある。

・鎌倉時代末に甲斐守護を勤めた石和流武田氏の政義は南北朝時代に当初は足利尊氏方の守護として活躍したが、その後、弟の貞政を含め後醍醐天皇方に転じたため、守護職を解任され悲運の死を遂げた。この後、石和流武田氏の力は次第に衰えることになった。

・南北朝時代の本家嫡流の武田信武は終始尊氏方として行動し、甲斐守護職を石和流武田氏の政義から奪い取った。すなわち武田家は信政の子、信時・政綱兄弟の時に安芸と甲斐に分かれたが、信武の代に至り、安芸の武田家(本家嫡流)が、庶流の石和流武田氏に奪われていた甲斐守護職を回復したのである。このような経歴から信武は武田家中興の祖といわれている。なお、信武の子供のうち、信成の系統は甲斐守護を氏信は安芸守護をそれぞれ継承することとなった。

・甲斐守護職を本家嫡流が代々継承したかのように伝えられているのは信武が甲斐守護職を回復し、石和流武田氏との力関係が逆転した後世になってから作られたものであるとの説がある。

・一般に武田家が甲斐と安芸に分かれたのは信武の子の信成・氏信の時とされているが、実際には四代前の信時・政綱の時代に分かれている。

・十代信武の子、信成・氏信の長幼の順序については系図によってまちまちであり、明確ではない。浅羽本武田系図によれば氏信が武田家惣領として安芸守護職に就いたとされているなど、信玄に至る信成の系統ではなく、氏信の系統が武田氏の総本家(嫡流)であるとの説もある。

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