塔の逓減率について
塔の美しさを決定付けるとされる逓減率。確かに五重塔・三重塔の解説では頻繁に登場する用語である。では一般的には聞きなれない「逓減」とは一体どういう意味なのであろうか。
通常、塔の造形は上層に上がるにつれ、軒の出や塔身の横幅が順に小さくなっていく。これを逓減といい、初層に対する最上層の幅の割合のことを逓減率という。
尚、上層と下層の差が大きい塔は逓減が大きいとし、ほぼ同じ幅のまま立ち上がる塔は逓減が小さいという。つまり最上層が初層の半分ならば、逓減率は0.5。塔は安定感のある姿になる。また逓減率を0.7とすると塔はすらりと背が高く観えるのが特徴である。
尚、逓減率については、およそ古代の塔ほど逓減が大きくて安定した構えとなり、時代が新しいほど逓減が小さく細長い印象となる。いうまでもなく塔は高ければ高いほど倒れやすくなる。逓減率が小さく塔身が細長い印象を受ける塔は見た目にも著しく安定を欠いたように観えることもままある。
では具体的に日本三名塔の逓減率を見てみると、法隆寺の五重塔は初層の幅に対して五層の幅は半分になっている。つまり逓減率は0.5。軒は下にいくほど大きく張り出し、どっしりとした安定感を感じさせる塔である。続いて日本最高級の名塔とされる醍醐寺の五重塔。逓減率は0.61であり、安定感がありながら、高さも感じさせるバランスの取れた理想的なプロポーションを持つ塔とされる。最後に瑠璃光寺の五重塔であるが、逓減率は0.68ですらりと細身に観える塔の代表であるといえるだろう。
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