「あの世(黄泉の国)」と「この世」の境界にある『黄泉比良坂』
黄泉比良坂は、伊邪那岐(イザナギ)命が先立たれた最後の妻、伊邪那美(イザナミ)命を慕って黄泉の国を訪ねた際の黄泉の国(あの世)の入口で、黄泉の国(あの世)と現世(この世)の境界とされている場所である。
古事記には 『そのいわゆる黄泉比良坂は、今の出雲の国の伊賦夜坂(いふやざか)である』 と記されている。
現在の島根県東部に位置する東出雲町の揖屋・平賀地区には、今でも伊賦夜坂とされる場所があり、現地には昭和15(1940)年に建立された「神蹟黄泉平坂伊賦夜坂傳説地」と彫られた石碑が建てられている。
この石碑の西方の山道が伊賦夜坂と言われていて、途中に塞の神が祀ってあり、地元では、この道を通るときは塞の神に小石を積んで通るという風習があり、今でも小さな石が積まれている。
また、伊邪那岐(イザナギ)命が黄泉国から還ろうとしたとき、追って来る悪霊邪鬼を桃子で撃退したのがこの坂であり、大石 「千引石」 であの世の入口をふさいだという神話から、 黄泉比良坂はお墓のルーツだという説がある。
黄泉の国の入口!黄泉比良坂伝説!
神代の時代、伊邪那岐命(イザナギノミコト)。以下「イザナギ」)という男の神様と伊邪那美命(イザナミノミコト。以下「イザナミ」)という女の神様がいた。
大変仲のいい夫婦神で、妻のイザナミは多くの島々や、海・風・山など多くの神々を生んだ。
しかし、火の神を産んだ時、大やけどをして亡くなり、黄泉の国という死んだ者の行く真っ暗な国へと旅立った。イザナギは悲しみ、妻に逢いたい一心で黄泉の国を訪ねた。
そして、妻の眠る御殿の扉をたたき「もう一度国作りを手伝ってほしいから、戻ってきておくれ」と言った。
すると、扉の向こうからイザナミが「私はすでに黄泉の国の食べ物を食べ、けがれてしまいました。しかし、あなたがそこまで言われるのなら、黄泉の国の神達と相談します。ただし、私がもう一度ここへ来るまでは、決して中に入ってはいけません」と答えた。
しかし、いくら待てどもイザナミは出て来ない。とうとうイザナギは待ちきれず扉をあけて入ってしまった。
御殿の奥へと進むと、そこには身体中が腐り果てた妻が横たわっていた。イザナギはあまりの恐ろしさに一目散に走って引き返した。
イザナミは「あれほど来てはいけないと話しておいたのに、よくも私に恥をかかせましたね」と女の鬼達に命令し追いかけさせた。追われたイザナギは、逃げる途中で髪に巻いていた蔓や櫛を鬼達に投げつけた。
蔓は葡萄の実に、櫛は衛になり、それらを鬼達が食べている隙に、黄泉の国とこの世との境である黄泉比良坂まで逃げ着いた。最後にイザナギはそこになっていた桃を三つとって投げつけると鬼達は逃げ帰っていった。
ついにイザナミまで追いかけてきたので、イザナギは千引石 (千人力でやっと動くほどの岩)でイザナミの追ってくる坂の道を塞ぎ、二度と行き来できないようにした。
その後、岩の向こうから「この仕返しに今日からあなたの国の人間を千人ずつ殺します」と言うイザナミの声が響いてきた。
そこでイザナギは「あなたがそうするなら私は一日に千五百人の産屋を建てよう」と答え、そういうわけで、この世の人口が増えるようになったと言われている。
所在地→島根県松江市東出雲町揖屋
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