世界で4ヶ所のみのレンガドックの一つである『浦賀ドック』




世界で4ヶ所(5基)しか現存していないレンガドックの一つである『浦賀ドック』

浦賀レンガドックは、明治32(1899)年に建造されてから平成15(2003)年に閉鎖されるまでの約100年間で日本丸や海王丸をはじめ、青函連絡船・護衛艦など1,000隻以上の船の製造や修理が行われてきた歴史のある造船所である。

レンガ造りのドライドックとしては、世界で4ヶ所(5基)しか存在せず、日本では浦賀にしか現存していない貴重な施設でもある。

浦賀での造船の歴史は古く、ペリー来航直後の安政元(1854)年に、現在は暗渠となっている浦賀駅前を流れる「長川」の河口で、中島三郎助らにより日本最初の洋式軍艦である鳳凰丸が建造された。

中島三郎助はペリー艦隊との交渉を担った浦賀奉行所の与力で、箱館戦争で命を落とした人物である。

明治24年(1891)中島三郎助の23回忌にあたり、箱館戦争の同志であった荒井郁之助が浦賀に造船所を造ることを提唱し、榎本武揚が賛成して地元の有力者に働きかけ、明治30年(1897)浦賀船渠株式会社が創設され、2年後にはドライドックが建造された。

浦賀船渠株式会社は、浦賀重工業株式会社を経て住友重機械工業株式会社となり、平成15年(2003)3月に閉鎖されたが、令和3(2021)年3月に住友重機械工業から横須賀市にドライドックが寄附され、常時ではないが、期間限定で一般公開が行われるようになった。

なお、ドライドックとは船体の検査や整備・修理などのために水を抜くことができるドックのことで、現在は水が抜かれた状態で管理されているため、総煉瓦造りのドックの全容を目にすることができる。

現存しているドックの規模は長さが約180m、幅が28.2m、深さが約10mと見るものを圧倒する迫力がある。

また、ドックの下まで降りることも可能でドックの中から間近で見る総煉瓦造りの景観は一見の価値がある。

現在は写真に写っている階段によりドックの下まで降りて行くことができる。

個人的にはドックを上から見下ろすよりも、ドックの下から見上げるよりも、『この階段からレンガを間近に見る景観が一番迫力があって好き』である。

現地の看板より

浦賀造船所

浦賀湾を囲むこの施設は、住友重機械工業株式会社追浜造船所浦賀工場です。

創業以来、浦賀船渠株式会社、浦賀重工業株式会社、更には現在の社名と変わりましたが、広く「浦賀ドック」の愛称で呼ばれてきました。

この造船所は、明治二十九年、当時農商務大臣であった榎本武揚などの提唱により、陸軍要さい砲兵幹部練習所の敷地及び民有地を取得して設立準備を進め、翌三十年六月二十一日の会社設立登記をもって発足したものです。資本金は百万円でした。

そのころの日本は、日清戦争などの影響もあって、外国から多くの艦船を買い入れ、世界的な海運国に発展しようとしていました。一方造船界は、技術面や設備面で大きく立ち遅れていました。その遅れを取り戻すため、外国人技師を雇い入れて国内各地に次々と造船所を造っていきました。この造船所もそのなかの一つで、ドイツ人技師ボーケルを月給約百五十円で雇いドックを築きました。

明治三十五年十月十五日、フィリピンの沿岸警備用砲艦ロンプロン号(三五〇排水トン)を進水させました。創業以来手がけてきた船は、いずれも国内の企業から愛注した工事用運搬船のたぐいばかりでしたが、十四隻目に初めて外国から受注した本格派の艦船を世に送りだしました。

この浦賀造船所で建造した艦船は、戦前・戦後を運じ約一千隻にのほります。現代もなお技術革新の旗手として、新しい船を造り続け、造船の浦賀の象徴として、今もなお地元市民に基盤を置いています。

なお、私は横須賀で生まれ育った人間で、それこそ「浦賀造船所」や「浦賀ドック」という『言葉』を耳にすることは何度となくあり、とても身近なものであった。

ところが、深い入江を取り囲むように造られていた浦賀造船所は高い塀に囲まれていたため、中に入ることはおろか、中の様子を伺うことすら一切できなかった。

浦賀造船所(浦賀ドック)のことは横須賀市民であれば誰もがその存在を知ってはいたものの、中の様子は『秘密のベール』に包まれていて、誰もその現物を見たことがない『幻』のようなもので、まさに『近くて遠い存在』であった。

それは、もう既に他界している父や祖父・祖母たちにとっても同じことだっただろう。

しかしながら、令和3(2021)年3月に住友重機械工業から横須賀市にドライドックが寄附されたことにより、常時ではないとはいえ、自分が生きているうちに、こうして一般公開されるようになったことは大変喜ばしいことだと素直にうれしく思う。

おまけ

 

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