日本最高の霊場・恐山菩提寺の『宿坊吉祥閣』に泊まってみた!




日本最高の霊場・恐山菩提寺の『宿坊吉祥閣』に泊まってみた!

恐山は誰もがその名を一度は聞いたことがあるであろうと思われる本州最果ての地である青森県の下北半島に所在している言わずと知れた日本最高・最恐の一大霊場である。

恐山は日本三大霊場(恐山・立山・白山)・日本三大霊山(恐山・比叡山・高野山)・日本三大霊地(恐山・川原毛地獄・立山)の一つに数えられ、見渡す限り、辺り一面に立ちこめる硫黄臭と荒涼とした風景はまさにあの世を彷彿とさせるものがある。

また恐山は宇曽利山湖に面しているが、その湖に面した砂浜は極楽浜と呼ばれていて、やはりあの世とこの世の境であるかのような景観を醸し出している。

まさに人は死んだらこういうところに行くんだろうなという頭の中の世界が見事に再現されたような場所である。

実際に下北半島では『人は死んだらお山さ行ぐ(人が死ねば(魂は)お山(恐山)に行く)』と言い伝えられ、死者の魂が集まる霊場として信仰を集めてきたという。

そんな恐山であるが、実は境内に平成15(2003)年に新しく建て直された宿坊があり、事前に予約をすることで宿泊をすることができる。

恐山の境内図(パンフレットより)

恐山温泉宿坊吉祥閣

当然ながら宿泊者以外は入館ができない。

こちらが入口を入ったところにあるエントランス。

並べられているスリッパには「恐山宿坊」の文字が!

エントランスでは「お願い地蔵尊」がお出迎えをしてくれる。

エントランスの右手にロビーがあり、フロントや事務所がある。

セレモニーホールのような感じ。

恐山宿泊受付帖

料金は1泊2食付きで12,000円。

宿坊のきまりごと

1.タ食は午後6時、朝食は翌朝7時半となっております。その際は、自服(浴衣着用禁止)となります。

1.浴衣はタ食後着用してください。

1.「朝のお勤め」は午前6時半です。地蔵殿(ご祈祷)と本堂(法要等)の2ケ所で執り行ないます。

1.タ食・朝食時の飲酒は禁止します。

1.タバコの喫煙は指定された場所でお願いします。

1.大浴場は午後10時迄、翌朝は午前5時からご利用出来ます。(pm10:00~am5:00までは消灯となります)

1.外風呂は境内に4ヶ所(冷抜・古滝・薬師・花染)ございます。何れも「男」「女」「混浴」の表示がありますので、お間違いのないようにご利用下さい。尚タ方以降ご利用の方は足元に充分ご注意願います。

1.イオウ成分が眼に影響する場合がありますので、大浴場及び外風呂とも、浴槽の湯で顔を洗ったり、湯を頭から浴びたりしないで下さい。

1.大浴場にドライヤーを用意しておりますが、使用中・使用後に本体等が過熱する場合がありますので十分注意して下さい。

1.館内の消灯(玄関・ラウンジ・ロビー・浴室・廊下等)、は午後10時です。

1.チュックアウト時間は午前10時となっております。

1 .その他ご不明の点はフロント迄お問合せ下さい

(注)小さな虫が入ってきますので、夜間はお部屋の窓は開けないで下さい。尚、翌朝の換気をお願いします。

宿坊「吉祥閣」

館内案内図

実際にかなりの部屋数がある。

私は瑞祥という部屋に宿泊した。

実際に宿泊した部屋の様子

お部屋は当然ながら畳の和室である。

部屋の中はトイレと洗面所はあるが、テレビと冷蔵庫はない。

携帯電話の電波も入らない。

この恐山の宿坊では現代社会では考えられない「テレビもなく、携帯電話の電波も入らない」という環境の中で一晩を過ごすことになる。

この「テレビもなく、携帯電話の電波も入らない」という「本来ならあって当たり前のものがない環境」は逆にとても新鮮で、宿泊しているところがあの「恐山の宿坊」ということもあり、都会の喧騒を離れて?実に贅沢で有意義な時間を過ごすことができる。

恐山宿坊での精進料理

食事は夕食が午後6時、朝食は翌朝の7時に宿泊者全員が一堂に会して「食堂」で食べることとなっている。食堂はかなり広い。まるで大宴会場のようである。

夕食も朝食もいずれも精進料理をいただくこととなる。

夕食

食事の前には五観の偈というものを唱えてから食事をいただく。

食事五観の解説

一つには功の多少を計り彼の来所を量る。

このお米は八十八回と云われる程大変な苦労を重ねて出来たものでありこの食膳に上るまでに沢山の人の手を経て今始めて戴けたことに先ず感謝する

二つには己れが徳行の全缺を忖って供に應ず。

私は今この食事を戴ける程日夜精進努力しているかどうか反省する

三つには心を防ぎ過を離ることは貧等を宗とす。

お腹がへると怒りっぽくなったりしてとかく過ちを犯しがちなもの、そうかと云っておいしいから沢山食べ嫌いなものだからと云って少しでやめたりはしない

四つには正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為めなり。

食事する事は薬を戴くのと同様でやせ細ったり命が絶えたりしない為に戴くのである

五つには成道の為めの故に今此の食を受く。

自分自身の本分を完うし、よりよき人間として素晴らしく生き続ける為に今この食事を戴きます

食後の偈

願わくはこの功徳を以て、普く一切に及ぼし、我等と衆生と、皆共に仏道を成ぜんことを。(ごちそうさま)

夕食で使った箸は朝食でも使うので、部屋に持ち帰る必要がある。(最後に使い終えた箸は記念に持ち帰ることができる。)

朝食

恐山の温泉

宿坊に泊まると外湯だけではなく、内湯(御法の湯)にも入ることができる。

しかしながら、湯気がスゴくて浴室内の写真を撮ることはできなかった。。。

法話と朝のお勤め、祈祷・法要等

食後は消灯の22時まで自由に過ごすことができるが、恐山に院代(住職代理)のがいる時には19時から法話を聞くことができる。(←自由参加だが、スゴい面白いので必見である)

朝のお勤めは延命地蔵殿と本堂で行われる。

地蔵殿(祈願・祈祷の道場)

本堂(供養の道場)

お部屋に置いてあった供養料や祈祷料や納骨料の料金表。

恐山の宿坊はテレビがなく、携帯電話の電波も入らないという非日常的な時間と空間の中で過ごすことができるので、改めて人生を見つめ直すのにはとてもいい場所であると思う。

また、日が暮れてからの恐山の山内の情景や、早朝のまだ誰もいない境内地獄めぐりなどを心行くまで堪能できるのは宿坊に宿泊して初めて味わうことができる最高の贅沢であるといえる。

所在地→青森県むつ市田名部宇曽利山3-2

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