巨大な磐座の上に自然石が積み上げられた摩訶不思議な一対の多層塔が建っているだけの『白旗神社』
白旗神社は山梨県北杜市(旧大泉村)の村落より1キロ余り離れた八ヶ岳の麓東北の山中に鎮座している神社である。
しかしながら現地を訪ねてみると「いわゆる神社」とは一線を画すものがあり、「とてもこれが神社とは思えない」といった「摩訶不思議な空間」を目の当たりにすることになる。
なぜならば、この白旗神社には拝殿や本殿といった神社には「あって然るべき」お社がなく、その代わりに巨大な腰掛石のような磐座の上に自然石を積み重ねた多層塔が二基建てられているのみだからである。
この他に類例がなく、一見すると神社の体をなしていないのではないか?と思えてしまう摩訶不思議な白旗神社の創建年代は不詳であるが、一説には奈良時代初期の創建ではないかと言われているそうである。
なお、山梨県神社庁のサイトによると、この白旗神社のご祭神は武甕槌命、倉稲魂命、天宇須女命の三柱で、ちゃんと宮司や氏子もいて例祭も行われているようである。
言い伝えによると逸見四郎有義がこの下に白旗を埋め、のちに神社として祀ったといわれていて、この巨石のまわりを力強く踏むと太鼓をたたく音がするとのことである。
ちなみに逸見四郎有義はのちに武田信玄を輩出したことで有名な甲斐源氏の第四代当主・武田信義の子であることから、事実であるかどうかは判然としないが「源氏の白旗」を埋めたとの言い伝えが残されているのだと思う。
いずれにしても、見た目には自然石をただ適当に組み合わせて積み重ねられているだけで、いかにも不安定で少しでも力が加わったらすぐにでも崩れてしまうように見えるこの多層塔は、実は「これまで一度も崩れたことがない」と言い伝えられているそうである。
現在では、参道の入口には鳥居が建てられていて、多層塔の周囲は柵で囲われていたりしているが、いずれも近年になってから造られたものであると思われ、それ以前は本当に何もない森の中に自然石が積み上げられた多層塔だけが人知れずに鎮座していたものだったのだろうと思われる。
しめ縄の先はまさに神聖な場所であるかのように思えた。
多層塔の前にある小さな石の祠は宝暦3(1753)年に建立されたものである。
この他には類例のない、極めて珍しく独特な形態の神社?にすっかり気圧されて萎縮してしまったのか、私は不覚にも「巨石のまわりを力強く踏みつけて太鼓をたたく音がするかどうかの検証」をすることもなく、「見た目にはとても不安定で少しでもさわればグラグラと崩れ落ちそうな多層塔の安定性を実際に確かめてみる」こともなく、現地をあとにしてしまった。
多層塔の周囲は磐座以外にも大きな岩が散見される。もともとそこにあったものなのか、あとから置かれたものなのか大変興味深い。
この鳥居から約100m北に例の多層塔がある。
では最後に改めて多層塔をもう一度じっくりと観察をしてみることとする。
向かって左側の多層塔
向かって右側の多層塔
裏側からも見てみた。
所在地→山梨県北杜市大泉町西井出8240-346
山梨県神社庁による由緒沿革
村落より一㎞余離れた八ヶ岳の麓東北の山中に在り、創立の年代は不詳であるが、境内社に姥神祠が祀られて居る点より、奈良朝初期の建社と思はれる。社殿は無いが大盤石(高八尺、長九尺、横五尺)その上に二塔立各高サ六尺にして五層なり、古人の口碑に武田太郎信義の孫逸見四郎有義此下に源氏の白旗を埋めたと云ふ。源氏拠地であって、其の後社名を白旗神社と改称した。後人因て神とし祀り側に石祠を立てた。
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